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最高裁判所第一小法廷 昭和52年(オ)369号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

一  上告代理人岸田功、同田口公丈、同新原一世、同浜口卯一、同粟津光世、同岡本久次の上告理由一について

所論の点に関する原審の措置は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

二  同二・三について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができその過程に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

三  職権によつて判断する。本件記録によれば、本件において、第一審以来岡本徳平が同人、岡本康孝及び岡本禧作の選定当事者として訴訟行為をし、第一、二審の判決においても、選定当事者岡本徳平、選定者岡本康孝、岡本禧作と表示されている。ところが、選定届及びこれに添付される選定書は第一審において提出されているだけであり、その選定書には、「和歌山地方裁判所田辺支部昭和四九年(ワ)第 号債務引受金事件の第一審訴訟手続につき民事訴訟法第四七条による原告等総員のため訴訟追行者と定める。」と記載されているのである。そこで、第二審以後も岡本徳平が選定当事者たる資格を有しているか否かが問題となるので検討する。

思うに、審級を限定して選定当事者を選定することも許されなくはないが(大審院昭和一五年四月九日判決・民集一九巻六九五頁)、選定当事者の制度が、当事者多数の訴訟において、訴訟手続を簡素化、単純化して、訴訟の効率的な進行をはかることを目的とし、選定された者が当事者として訴訟の終了にいたるまで訴訟を追行することがその本旨であることに鑑みると、訴訟の当初において作成された選定書に「第一審の訴訟手続について」との文言が記載されている場合でも、特段の事情がない限り、右の記載は、事件名等と相まつて選定当事者を選定する事件を特定するためのものであつて、選定の効力を第一審の訴訟に限定する趣旨のものではなく、選定の効力は訴訟の終了にいたるまで継続しているものと解するのを相当とする。

右のとおりであるから、岡本徳平は原審及び当審においても選定当事者であると認められる。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岸上康夫 裁判官 団藤重光 裁判官 藤崎萬里)

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